はくにゃんの調書

日記、何もしていないことに気がつく

1018

もう何も言うことがないというところから
横浜美術館に連れて行かれて
蔡國強展なるものを
狼の群れを見に行った。
透明な壁のむこうに狼が無数に吊るされている様、
あるいは配置、処置されている様、
迂闊に上を向いて歩けばぶつかってしまう
群れを縫って歩く
数える
空調かなにかにあてられて
それか誰かが揺らしたのだろうか
振り子のように
狼が揺れていた
それを下から見ていた
監視員たちがいたるところでこちらを見ていた
俺は狼の群れが上を飛び越えているその
心地を楽しんだ
今日が最終日らしくひととおり混んではいたのか、
こんなものじゃないのか
美術館には滅多にいかないが、行けば行ったで
必ず美人と歩調が合う
その美人は綺麗な靴を履いていて、多くの場合
髪の毛も綺麗である
展示の文章を熱心に読むふりをして
人だかりに立ち止まり
美人を観察する
900円か、安いもんじゃねえか
人間をみにいってるんじゃないんだぞ
そして次の展示室へ
人間をみにいってるんじゃないんだぞ

横浜まで
みなとみらいという字面は
まるで三森すずこみたいじゃねえか
などと考えつつ、横浜まで
横浜なりの時間を経て、
遠い
そこで何かの本を読んだ
詩のようだった
携帯の電池が早々に切れて、
待ち合わせ場所も、時間も決めずに
さんざめく
秋の群衆の闊歩に怯えつつ
俺は40分も待たされた
キレそうだった
先に帰ることさえも考えたもんだ
タバコも吸えないし
まったくなんなんだ
その後は隣接の大型商業施設を歩いた
とくに目新しいものはなかった
エロゲなどでよくこういうワードが出るが
たぶんこういうことを言うんだろう
雑踏のサンプリングをしに行こうか
朝早くから

文フリのガダログをなんとなく眺めて
また出品するのかと半ば呆れていた
まだ何にも書いていない
何も読んでもいない
空虚だなぁ
網走に行った弟に言ってやりたい、
お前の兄貴はまさに
浪費という字に相応しい
三森すずこも笑ってくれる
優しく貝を剥いてくれる
鱗を取るにはペットボトルのキャップがちょうどいい、
そういうことを教えてくれる優しい人間だと
稲刈りを期すカラスを指差して
彼らも知っているんだと
優しい目の持ち主だと
魚の目は食べると美味しいと

眠り方を忘れる
夜ののどごしはたいそう美味い
のどごし生はほんとうに不味い
いまだけ!と言わず、いつまでも出してほしい
おばあちゃんの背中を擦るようなペースで
調子が出てきてフランドルへの道を再開する
8ページでやめた
残された時間を思う
There and Back Again
エリオットの荒地を原文で読んで何かがすっかり変わるようなことがあるのなら
俺は原文の原文の原文の原文の原文の(…)
家へと帰る途中、
塀に囲まれた夜道で
犬の鳴き声を聞いた
こちらへと向かってくることがわかると
呼吸が激しくなってきた